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月例研究会の報告
2007年1月23日(火)

健康医療 大学 "内" ベンチャー:Engineering based Medicine
講師:早稲田大学大学院 理工学研究科>
                          生命理工学専攻 主任教授 梅津 光生
          早稲田大学大学院 理工学研究科
                          21世紀COE 助手                   朴 栄光

バイオベンチャーと知財マネジメント
 講師:早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構
                     戦略マネジメントセンター 教授 川口 竜二

コーディネーター:
             早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構
                戦略マネジメントセンター 教授 長谷川 克也

↑講師名(敬称略)をクリックすると、講演サマリーへジャンプします

 

月例研究会風景

 

 

 

 

 

梅津教授
梅津教授

 

 

 

 

 

 

 

 

朴氏
朴氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川口教授
川口教授

健康医療 大学 "内" ベンチャー:Engineering based Medicine

早稲田大学大学院 理工学研究科 生命理工学専攻 梅津教授

 恩師・土屋先生は,雪に弱い新幹線の対策のためにスプリンクラーを作ったことで有名だが,恩師が榊原先生(女子医大・心臓外科)と行った共同研究が人工心臓研究に関わるきっかけとなった.その共同研究では,"流れをコントロール" する技術を血液に応用するものだった.研究上,動物実験を数多く行ったが,動物好きであったことから死に至らしめる実験がいたましく,生かすことができないかという切実な思いが募った.このことが,現在の研究へと繋がっている.

 血液は単なる赤い液体ではない.それは血液が血管中の異物や表面の異常を自身で判断できるためである.例えば,血管上に小さな傷があれば,そこに血液が集まってしまう.従って人工心臓の実用化は血栓との戦いといえる.

 現在,人工心臓には,全置換型人工心臓,補助人工心臓の二種類がある.初めて人工心臓を作ったのは,日本人心臓外科医の阿久津先生である.当初動物実験では動物を生かすことができなかったが,医学的アプローチのみならず,工学をはじめとする学際的な研究チームになってから可能になった.阿久津先生によると,人工臓器の開発を成功させるためには,設計,材料,製作という3つの鍵があるという.これらの実現には,工学の寄与が大きい.

 初の日本発人工心臓・Evaheartは,女子医大のほか,数多くの企業,エンジニアの協力によって完成させたものである.しかし日本では人体への利用の壁が高く導入に際して時間がかかっていたところ,人工心臓を作っているコンペティターが賛同してくれ,厚生省の認可を得ることができた.近年アメリカで行われた調査によると,Evaheartの装着後の生存率は,他の人工心臓に比べて極めて高いことが報告されている.

 また,人工心臓のほか,まったく異なるコンセプトの研究も進めている.たとえば現在の人工心臓は数百万〜数千万円かかるが,数十万単位での提供を可能にする研究を進めている.これは積層化心筋細胞シートと呼ばれる人工心筋を作るものだが,将来このシートの移植が実現するかもしれない.

 現在,梅津研究室では,「従来にないものを研究し世界に勝ち抜けるものを」というモットーの下,15の多様なテーマで研究を進めている.本日の朴さんの発表はそのうちのひとつである.

 本研究では,基礎訓練(冠動脈モデル),応用訓練(拍動装置),次世代訓練(スコアリングシステム)という血管吻合手技を効率的に訓練できるシステムを開発した.血管吻合の上手な人は,2mmの血管を20分で縫うことができるが,このようなレベルになるためには多くの練習が必要とされる.しかし,現状の豚心臓を用いた訓練機会は限られており,医師の養成が難しい状況となっている.

 そこで,血管吻合主技を訓練するシステムにより,医師への訓練機会の提供を事業化した.また訓練には評価が不可欠だが,評価は医師の感覚による定性評価と工学的な定量評価を併用している.つまり,スキルという主観的な評価も勘案しつつ匠の技の定量化を試みているのだ.このようなバランスの良い評価を行なうことで,訓練を行う人のモチベーションを維持できると考えている.

 この訓練システムは,これまで多くの医大や学会で実演を行っており,好評を得ている.訓練システムの認知度も高まり,訓練センターの設立も順調に進められている.今後も,より一層の充実を図りたい.

早稲田大学大学院 理工学研究科 21世紀COE 朴氏

  「"関係あるかないか" ではなく,"いかに関係付けるか" を大切にすること」 「世界で誰もやっていないことに挑戦し,人の役に立つこと」 「命に一生懸命であること」 の三つをフィロソフィーとし,どこでも誰にでもできるものを実現するために,血管吻合主技の訓練しシステム開発を続けてきた.

 最初は2004年に心臓を丸ごと開発してみた.しかし高価であるため,本当のニーズを探るために一流の外科医に相談にいった.その結果として現在のような訓練システムへの着想を得た.また開発したシステムは,研究のままで終わらせてしまっては,より多くの医師育成を実現できない.そこで事業化することになった.

 学生の立場でベンチャービジネスを行うことは,容易なことではない.まず,開発製品のデザインを向上させつつ,コストダウンをしなければならないという問題に直面し,苦労した.装置開発においては,恩師の時代から取引のある大田区の中小企業と連携している.

 また資本金の確保についても,解決が必要だった.そこでビジネスプランを洗練させるために,数々のビジネスコンテストに出場,資金を得ることができた.WERUの2007年度ビジネスプランコンテストでも優勝することができた.

 実務についても,取引銀行,税務,資本政策についての対応が必要だった.これらに関しては,ベンチャー設立に詳しい教授からアドバイスをもらった.またオフィスも重要であるが,運よく大田区から借りることができた.

 このように,恩師,心臓外科の先生方,開発パートナーである企業,ビジネス上のアドバイスをいただく方々など,様々な方の背中を見てここまでやってきた.今後は2007年2月に心臓血管外科学会に出展し,4月には血管吻合主技の訓練装置としてYOUCANとBEATの販売開始を予定している.夢は自分との約束であると考えているので,これからも邁進していく所存である.

(技術・製品の詳細については,事業プランコンテストのレポートを参照)

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バイオベンチャーと知財マネジメント

早稲田大学 先端科学・健康医療融合研究機構 戦略マネジメントセンター 川口教授

 長年臨床検査センターで研究開発に従事してきた.在職時は診断用遺伝子検査や淡白検査など,数々の開発商品を検査へ導入してきた.

 2004年には独立し,指導教員の縁で東京農工大内に会社(PropGene Inc.)を設立した.同時に,早稲田大学では知財マネジメントを専攻した.2006年には社内に衛生検査所を設立し,認可を取得した.現在,資本金は8500万円,従業員8名(非常勤含む)となっており,さらに規模を拡大中である.

 近年,大学発バイオベンチャー件数は増えているが,まだ成功事例は少ない.それゆえ,VCも投資先として敬遠する傾向がある.このような状況を踏まえ,次のようなビジョンと戦略の下で運営を行っている.

 まず自社のビジョンとして,健康に貢献できる企業でありたいと思っている.病気の検査をする手段の一つとしてDNAチップを利用した方法があるが,自社では現在市場をリードしている企業とはまったく異なる技術を用いて,より安価な製品の提供を目指している.

 病気の原因は,環境要因,遺伝要因の二つに大別できる.環境要因が一番多いのは,感染症だが,大半が感染しても感染しない人には遺伝的に免疫がある.また,遺伝的な要因を持っていても発病しない人がいるが,これは環境に理由があると考えられる.このように両者は互いに影響しあっているのである.

 例えば,生活習慣病についても,近年は環境要因のみならず遺伝要因も影響しているといわれている.遺伝子検査では,生活習慣病の関連遺伝子を調べることで,将来起こる可能性がある病気を予測することができる.このような検査によって,体質を把握し生活改善を行うための保健指導が可能になるのである.

 しかし従来技術では,検査に熟練の技術が必要であり,かつ高価であった.そこで,誰にでも使える検査技術の開発を続けている.自社技術の一つに,14種類の菌を一度で検査することができるものがあるが,このような技術の開発により料金的にも安く遺伝子検査を提供できると考えている.現在DNA産業は急拡大を続けており,サービスの多様化や個人情報保護が課題となっているものの,商機があると考えられる.

 また,戦略として知財創出に焦点を当て,研究開発は細く長く続けていくという基本姿勢をとっている.必要となる膨大な研究費については,大学施設などの関連資源を徹底利用し,事業が当たる確率の低さを念頭に,挑戦の数を増やすように心がけている.また中期的には,知財に立脚した戦略を国の知財構想(イノベーション・スーパーハイウェイ構想)と合致させる方針である.

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